建設現場における熱中症対策などについての積算、「熱中症対策に資する現場管理費補正」について解説します。
熱中症は、高温多湿な環境下において体内の水分及び塩分(ナトリウム等)のバランスが崩れる・体内の調整機能が破綻する等により発症する障害の総称です。
主な症状として、めまい・失神・倦怠感など様々な異常がカラダに現れます。
特に気温の高い夏場に多く発生し、建設業は他の業種に比べ多く発生しています。
建設工事は屋外での作業が多く、夏場は特に熱中症の発生リスクが高まります。
多くの建設現場では、様々な熱中症対策に取り組んでいます。
主な熱中症対策
上記は一例ですが、建設現場では様々な対策を実施しています。
積算基準書に熱中症対策という言葉が出てきたのは、イメージアップ経費が現場環境改善費へ改訂された2017年度です。現場環境改善費の『安全関係』項目に『熱中症予防』が追加されました。
その後、2019年度国土交通省積算基準改定概要の発表時に『熱中症対策に資する現場管理費補正の導入』が案内されました。工期内における真夏日の割合によって現場管理費へ熱中症対策費用を加算するという内容です。
国交省以外の省庁も同様の考え方を設けており、適用する自治体も増えています。
2019年度の「熱中症対策に資する現場管理費補正」と2017年度改訂の「現場環境改善費の熱中症予防」はどのような違いがあるのでしょうか?
国交省の地方整備局によると、以下のように対象を分けているようです。
自治体によっては、「熱中症対策に資する現場管理費補正」と「現場環境改善費の熱中症予防」は同時に補正対象になり得ないと考えている自治体もあるようなので、適用範囲を確認することをお勧めします。
「熱中症対策に資する現場管理費補正」は以下の式で計算されます。
真夏日率 = 工期内の真夏日 ÷ 工期
補正値(%) = 真夏日率 × 1.2(補正係数)
上記式で求めた補正値(%)を現場管理費率に加算します。
補正値を算出するにあたり、押さえておきたい前提条件や適用範囲があります。
対象工事は、主たる工種が屋外作業である工事で、工場製作などを含む工事の場合は、工場製作にかかる期間は工期から除外されます。
全国全ての地域が補正対象地域です。
※暑さ指数(WBGT)とは…湿度、日射・輻射などの周辺熱環境、気温の3つを取り入れた指標の事
発注者によって、上記1~3を複合的に判断している場合もありますし、単独で判断している場合もあります。また、新型コロナウイルス対策に伴う熱中症対策時には、最高気温が30度以上から28度以上へ変更になりました。
正確に計算が必要な場合は、自治体に合わせて情報収集の上、算出する事をお勧めします。
『熱中症対策に資する現場管理費補正』は設計変更時に対応するケースが一般的です。
真夏日などの実績を踏まえて精算するというイメージです。
一方、試行的取組みとして『事前計上方式』があり、当初積算時点で熱中症対策費を計上する考え方です。
事前計上時の真夏日は、直近過去3年の気象データを使用して計算します。
注意点として、実績による真夏日の過不足分については、設計変更の対象外となります。
実際に、工期や真夏日の数値を用いて『熱中症対策に資する現場管理費』を求めていきます。
まず真夏日率を求めます。
真夏日率 = 60日(工期内の真夏日) ÷ 150日(工期) = 0.4
真夏日率を求めたら、次に現場管理費率へ加算する補正値を算出します。
補正値(%) = 0.4(真夏日率) × 1.2(補正係数) = 0.48%
今回の例では、現場管理費率へ加算する補正率は0.48%となりました。
求めた補正値を現場管理費対象額へ乗じることで、熱中症対策に資する現場管理費の割増額を求めます。
50,000,000円 × 0.48% = 240,000円
240,000円が熱中症対策に資する積算上の費用となります。
『熱中症対策に資する現場管理費補正』はその他の補正と合わせて補正する事が可能です。
その他の補正とは、以下の2つです。
仮に、工期が長期間で夏場の熱中症対策補正と冬場の積雪寒冷地補正を両方加味する場合は、最高加算率が2%と上限が設けられています。
よって、熱中症対策補正率と積雪寒冷地補正率を足して2%を超える場合は2%となります。
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