ドボセキ 土木積算システムで絶対落札 » 土木積算の精度をあげるためのワンポイント講座 » 土木積算のポイント 熱中症対策費の計上について

土木積算のポイント 熱中症対策費の計上について

建設現場における熱中症対策などについての積算、「熱中症対策に資する現場管理費補正」について解説します。

熱中症とは

熱中症は、高温多湿な環境下において体内の水分及び塩分(ナトリウム等)のバランスが崩れる・体内の調整機能が破綻する等により発症する障害の総称です。

主な症状として、めまい・失神・倦怠感など様々な異常がカラダに現れます。

特に気温の高い夏場に多く発生し、建設業は他の業種に比べ多く発生しています。

建設現場の熱中症対策

建設工事は屋外での作業が多く、夏場は特に熱中症の発生リスクが高まります。
多くの建設現場では、様々な熱中症対策に取り組んでいます。

主な熱中症対策

(1)作業環境の整備

  • 大型扇風機の設置
  • ドライミストの設置
  • 遮光ネットの設置
  • 送風機による送風

(2)休憩場所の整備

  • エアコンの設置
  • 給水器の設置
  • シャワー室の設置
  • 冷蔵庫、製氷機の設置
  • 日よけテントの設置

(3)作業管理

  • 作業時間の短縮、出退勤の前倒し
  • 休憩時間の確保
  • 水分・塩分の摂取(熱中飴・タブレット、経口保水液の常備)
  • 通気性の良い服装(空調服の配布など)

(4)健康管理

  • チェックシートによる管理
  • 現場巡視による管理

上記は一例ですが、建設現場では様々な対策を実施しています。

熱中症対策の積算定義

積算基準書に熱中症対策という言葉が出てきたのは、イメージアップ経費が現場環境改善費へ改訂された2017年度です。現場環境改善費の『安全関係』項目に『熱中症予防』が追加されました。

その後、2019年度国土交通省積算基準改定概要の発表時に『熱中症対策に資する現場管理費補正の導入』が案内されました。工期内における真夏日の割合によって現場管理費へ熱中症対策費用を加算するという内容です。

国交省以外の省庁も同様の考え方を設けており、適用する自治体も増えています。

現場環境改善費(熱中症予防)との相違点

2019年度の「熱中症対策に資する現場管理費補正」と2017年度改訂の「現場環境改善費の熱中症予防」はどのような違いがあるのでしょうか?

国交省の地方整備局によると、以下のように対象を分けているようです。

  • 現場管理費補正:作業員個人に対する熱中症対策費用(塩飴、経口保水液等効果的な飲料水等)
  • 現場環境改善費:現場の施設や設備に対する熱中症対策費用(日よけテント、遮光ネット等)

自治体によっては、「熱中症対策に資する現場管理費補正」と「現場環境改善費の熱中症予防」は同時に補正対象になり得ないと考えている自治体もあるようなので、適用範囲を確認することをお勧めします。

「熱中症対策に資する現場管理費補正」の計上方法

「熱中症対策に資する現場管理費補正」は以下の式で計算されます。

真夏日率 = 工期内の真夏日 ÷ 工期

補正値(%) = 真夏日率 × 1.2(補正係数)

上記式で求めた補正値(%)を現場管理費率に加算します。

補正値を算出するにあたり、押さえておきたい前提条件や適用範囲があります。

対象工事は、主たる工種が屋外作業である工事で、工場製作などを含む工事の場合は、工場製作にかかる期間は工期から除外されます。

全国全ての地域が補正対象地域です。

真夏日の定義

  1. 施工現場から最寄りの気象庁が公表している地上気象観測所の日最高気温が30度以上の日
  2. 施工現場から最寄りの環境省が公表している観測地点の暑さ指数(WBGT)が25度以上の日
  3. 夜間作業においては、作業時間帯の最高気温が30度以上又は、暑さ指数(WBGT)が25度以上の日

※暑さ指数(WBGT)とは…湿度、日射・輻射などの周辺熱環境、気温の3つを取り入れた指標の事

発注者によって、上記1~3を複合的に判断している場合もありますし、単独で判断している場合もあります。また、新型コロナウイルス対策に伴う熱中症対策時には、最高気温が30度以上から28度以上へ変更になりました。

正確に計算が必要な場合は、自治体に合わせて情報収集の上、算出する事をお勧めします。

積算での反映時期

『熱中症対策に資する現場管理費補正』は設計変更時に対応するケースが一般的です。
真夏日などの実績を踏まえて精算するというイメージです。

一方、試行的取組みとして『事前計上方式』があり、当初積算時点で熱中症対策費を計上する考え方です。

事前計上時の真夏日は、直近過去3年の気象データを使用して計算します。

注意点として、実績による真夏日の過不足分については、設計変更の対象外となります。

熱中症対策に資する現場管理費補正の計算例

実際に、工期や真夏日の数値を用いて『熱中症対策に資する現場管理費』を求めていきます。

  • 工期:150日
  • 真夏日:60日
  • 現場管理費対象額:50,000,000円

まず真夏日率を求めます。

真夏日率 = 60日(工期内の真夏日) ÷ 150日(工期) = 0.4

真夏日率を求めたら、次に現場管理費率へ加算する補正値を算出します。

補正値(%) = 0.4(真夏日率) × 1.2(補正係数) = 0.48%

今回の例では、現場管理費率へ加算する補正率は0.48%となりました。

求めた補正値を現場管理費対象額へ乗じることで、熱中症対策に資する現場管理費の割増額を求めます。

50,000,000円 × 0.48% = 240,000円

240,000円が熱中症対策に資する積算上の費用となります。

その他の補正と合わせて加算する場合は注意

『熱中症対策に資する現場管理費補正』はその他の補正と合わせて補正する事が可能です。

その他の補正とは、以下の2つです。

  • 積雪寒冷地の補正
  • 緊急工事の補正

仮に、工期が長期間で夏場の熱中症対策補正と冬場の積雪寒冷地補正を両方加味する場合は、最高加算率が2%と上限が設けられています。

よって、熱中症対策補正率と積雪寒冷地補正率を足して2%を超える場合は2%となります。

土木積算に役立つガイドブック
無料ダウンロードはこちらから

各地域の特徴を日々収集し研鑽しつづける土木積算システム「アトラス」

昨今では土木工事業者各社の土木積算の精度があがってきており、地域によっては公共土木工事の入札はますます熾烈さを極めてきています。
そんななか入札担当者が土木積算に頭を悩ます理由の一つは各地域独自の土木積算の特徴やルール、クセ(習慣)などがあり、これらをひとりの担当者が常にキャッチアップしていくことはほぼ不可能だということです。
土木積算システム「アトラス」は全国21拠点のサポート体制を持ち、各地域の発注者の特徴や情報を日々収集し、検証作業を行い、システムのアップデートやユーザーのサポートをおこなっています。アトラスのサポートやシステムを使うことで効率的に地域特徴にあった土木積算を精度高く行うことが可能になります。

イメージ イメージ
地域ごとノウハウが充実
⼟⽊積算システムアトラスとは?
全国21拠点で地域の発注者特徴を把握&研究し積算精度を⽇々研鑽。

30年の実績と土木積算のノウハウが蓄積された土木積算システムATLUS REAL Evo(アトラス レアル エボ)。
その大きな特徴は全国に配置した拠点による地域に密着したサポート体制とシステムのローカライズ(地域化)。
昨今、地域や担当者ごとの土木積算の特徴や習慣をおさえることが土木積算精度を上げるうえで大切になってきています。
アトラスでは各地の拠点にて地域の情報収集、検証作業を行い、知見を蓄積し、導入ユーザーに土木積算ノウハウを共有しています。

イメージ
たった24円違いで落札できない…
熾烈さを極める
公共土木⼯事⼊札!

昨今の公共⼟⽊⼯事⼊札は、建設⼯事の中でも特に精度が求められています。
土木積算システム「アトラス(ATLUS REAL Evo)」を展開するコンピュータシステム研究所の協力のもと、公共工事、土木工事の落札のコツ・ポイントについて解説!

公共土木工事の落札の
コツ・ポイントをチェック

あわせて読みたいページ