公共土木工事の入札で勝ち、案件を落札するためには、より精度の高い土木積算が求められています。ここでは、土木積算システム「アトラス」を展開するコンピュータシステム研究所の協力を得て、川崎市の土木積算や入札制度における地域的な傾向と特徴についてまとめました。
土木積算システム「アトラス」を展開するコンピュータシステム研究所では、全国21拠点に調査スタッフ&サポートスタッフを配置し、発注者ごとに異なる土木積算の傾向や癖などの情報を収集しています。大量の設計書の検証作業など、日々土木積算の精度を上げるためのローカルな情報を蓄積し、その知見を活かしシステムの精度アップや地域の土木業者のサポートを行っています。
ここではその一部をお見せいたします。
(※以下の情報は株式会社コンピュータシステム研究所の提供資料および川崎市公表資料をもとに編集・作成しています。)
川崎市では、公共工事の発注において、公平性・透明性・競争性の確保と、適正な施工品質の確保を目的に、入札・契約制度を運用しています。
川崎市の公共工事では、一般競争入札、指名競争入札、総合評価落札方式、最低制限価格制度、低入札価格調査制度などが、案件の規模や内容に応じて組み合わせて運用されます。
また、川崎市の「入札情報かわさき」では、発注予定、入札公表、落札結果、電子入札システム、競争入札参加資格申請、契約関係規定などが案内されています。財政局の工事案件は水曜日、委託・物品案件は金曜日に公告され、上下水道局の工事・委託・物品案件は火曜日に公告される運用が示されています。
引用元:川崎市「入札情報かわさきトップページ」
川崎市は、臨海部の工業地帯、多摩川沿いの河川区域、住宅密集地、幹線道路沿道、再開発エリア、丘陵地など、多様な施工環境を持つ都市です。道路、下水道、水道、河川、公園、舗装、橋梁、造成など、工種や施工場所によって現場条件が大きく異なります。
そのため、川崎市の土木積算では、単価や歩掛だけでなく、設計図書、特記仕様書、見積参考資料、単価適用年月、交通規制、夜間施工、搬入出条件、処分先条件などを正確に読み取ることが重要です。
川崎市の公共工事で広く採用される方式です。公告において、工種、等級、施工実績、配置予定技術者、地域要件などの参加資格が定められ、要件を満たす事業者が入札に参加します。
川崎市では、電子入札システムや業者登録システムが運用されており、公告確認、入札書提出、開札、結果確認などをシステム上で行う案件が中心です。電子入札システムは、稼働時間が8時から20時である旨も案内されています。
引用元:川崎市「入札情報かわさきトップページ」
工事内容や規模、発注条件によっては、指名競争入札が採用される場合があります。施工実績、技術力、地域性などを踏まえて業者を指名し、その範囲内で競争を行う方式です。
少額案件、緊急性の高い工事、特殊技術を要する工事などでは、随意契約が適用される場合があります。
なお、川崎市では、令和7年6月1日以降に予算執行伺いを起案する案件から、少額随意契約を可能とする基準額を引き上げています。工事又は製造の請負については、基準額が250万円から400万円へ引き上げられました。
引用元:川崎市「令和7年6月から入札契約制度の見直しを行います」
川崎市では、ダンピング受注の防止や施工品質の確保を目的として、最低制限価格制度および低入札価格調査制度を運用しています。
川崎市の工事請負契約では、一定の案件において最低制限価格が設定されます。最低制限価格を下回る入札は失格となり、落札対象とはなりません。
川崎市の「川崎市工事請負契約に係る最低制限価格取扱要綱」では、最低制限価格を設定する契約について、特例政令が適用される契約および総合評価一般競争入札による工事請負契約を除く工事等の請負契約としています。ただし、予定価格(税込)が6億円以上の特殊な工事請負契約については、最低制限価格を設定しないことができるとされています。
引用元:川崎市「川崎市工事請負契約に係る最低制限価格取扱要綱」
最低制限価格の算出では、予定価格算出の基礎とした設計書等に基づき、次の費目をもとに算出基礎割合を求めます。
この合計額を工事価格で除した割合を算出基礎割合とし、任意に若干の補正を行ったうえで、予定価格に補正後の割合を乗じて最低制限価格を算出します。
引用元:川崎市「川崎市工事請負契約に係る最低制限価格取扱要綱」
また、最低制限価格は予定価格の80%から95%の範囲内で設定されます。算出基礎割合が95%を超える場合は95%、80%に満たない場合は80%とされ、算出額に10,000円未満の端数が生じた場合は切り捨てる扱いです。
引用元:川崎市「川崎市工事請負契約に係る最低制限価格取扱要綱」
川崎市では、他自治体で多く見られる「直接工事費97%」ではなく、最低制限価格の算定において「直接工事費100%」が用いられている点が特徴です。最低制限価格を予測する際には、直接工事費・共通仮設費・現場管理費・一般管理費の費目構成を正確に把握する必要があります。
川崎市では、著しく低い価格による入札があった場合、契約内容に適合した履行が可能かどうかを確認する低入札価格調査制度が運用されています。
川崎市建設工事低入札価格調査取扱要領では、低入札価格調査の対象工事として、特例政令が適用されるもの、総合評価一般競争入札によるものなどが定められています。
引用元:川崎市「川崎市建設工事低入札価格調査取扱要領」
また、川崎市では、令和7年6月1日以降の公告案件から、低入札価格調査における価格失格基準の算出方法を見直しています。変更後は、調査基準価格に95%を乗じて得た額を価格失格基準とし、その額が予定価格の80%を下回る場合は、予定価格の80%を価格失格基準とします。1万円未満の端数は切り捨てです。
引用元:川崎市「令和7年6月から入札契約制度の見直しを行います」
入札者が提出する積算内訳書において、価格失格基準を下回った場合には、その入札者は失格となります。
引用元:川崎市「令和7年6月から入札契約制度の見直しを行います」
そのため、川崎市の積算では、最低制限価格だけでなく、低入札価格調査の対象案件における調査基準価格、価格失格基準、積算内訳書の費目構成を正確に整理することが重要です。
川崎市では、入札時に提出する積算内訳書について、令和7年12月の入契法改正に伴う対応を進めています。
川崎市は、入札参加者に対し、入札時に提出する積算内訳書に、改正入契法で定められた「材料費、労務費及び当該公共工事に従事する労働者による適正な施工を確保するために不可欠な経費」の内訳記載欄を新たに設け、内訳の記載を求めるとしています。
引用元:川崎市「入札時に提出する積算内訳書への労務費等の内訳の記載について」
ここでいう「当該公共工事に従事する労働者による適正な施工を確保するために不可欠な経費」とは、法定福利費の事業主負担分、安全衛生経費、建設業退職金共済契約に係る掛金とされています。
引用元:川崎市「入札時に提出する積算内訳書への労務費等の内訳の記載について」
対象案件は、令和8年4月1日以降に公告または指名通知書を送付する全入札案件です。労務費等の内訳が不記載である場合は、当該入札を無効として取り扱う場合があるとされています。なお、当面の間、算出が困難な場合は「算出不能」「計上不能」「一部のみ計上」など、その旨が分かるように記載して提出することが認められています。
引用元:川崎市「入札時に提出する積算内訳書への労務費等の内訳の記載について」
これにより、川崎市の入札では、積算価格そのものの精度に加え、積算内訳書における材料費・労務費・法定福利費・安全衛生経費・建退共掛金等の費目管理が重要になります。
川崎市では、価格だけでなく、競争参加者の技術的能力など価格以外の要素も評価する総合評価落札方式を運用しています。
川崎市の総合評価落札方式では、価格と価格以外の要素を総合的に評価し、市にとって最も有利な申込みをした者を落札者として決定します。これにより、工事品質の向上、ダンピング防止、不良・不適格業者の排除、不正防止などが期待されています。
引用元:川崎市「川崎市総合評価落札方式のガイドライン」
川崎市では、原則として予定価格(税込)3億5千万円以上の工事を総合評価落札方式の対象としています。ただし、建築工事については5億円以上が対象です。対象工事であっても、特別な事由により総合評価落札方式が適当でない場合は通常の一般競争入札を行うこととされています。また、予定価格が対象に満たない工事であっても、工事内容により総合評価落札方式が適当と判断される場合は適用されます。
引用元:川崎市「川崎市総合評価落札方式のガイドライン」
川崎市の総合評価落札方式には、主に次の3種類があります。
引用元:川崎市「川崎市総合評価落札方式のガイドライン」
技術的な工夫の余地や効果が大きい工事に適用されます。発注者が示す標準的な仕様に対し、施工上の工夫等の技術提案を求め、技術的能力、施工能力、信頼性・社会性など価格以外の要素と入札価格を総合的に評価します。
発注者の指示する仕様に基づき、適正かつ確実に工事を施工する能力を確認するため、簡易な施工計画書の提出等を求める方式です。業者の技術力、施工能力、信頼性・社会性、地域性などを評価します。
施工計画の評価を要件とせず、同種工事の施工実績、工事成績、業者の信頼性・社会性など、定量化された評価項目と入札価格を総合的に評価します。
川崎市の総合評価落札方式では、技術評価点を入札価格で除した数値を総合評価点とする「除算方式」が採用されています。入札価格が低入札価格調査基準価格以上の場合は、技術評価点を入札価格で除して算出します。入札価格が低入札価格調査基準価格未満の場合は、技術評価点を低入札価格調査基準価格で除して算出します。
引用元:川崎市「川崎市総合評価落札方式のガイドライン」
総合評価案件では、単純な最低価格競争とは異なり、価格点と技術評価点のバランスが重要です。技術提案や施工計画の内容が履行できなかった場合には、違約金や工事成績評定点の減点などの措置が定められているため、加点を狙うだけでなく、実行可能性を踏まえた提案が必要です。
引用元:川崎市「川崎市総合評価落札方式のガイドライン」
川崎市では、土木工事標準積算基準書等に関する情報を公開しています。土木工事標準積算基準書等の改定・訂正情報、積算システム等に関するお知らせ、道路工事保安施設設置基準、総価契約単価合意方式試行実施要領、設計変更ガイドラインなどが掲載されています。
引用元:川崎市「土木工事標準積算基準書等について」
川崎市の土木積算では、案件ごとに設計図書、見積参考資料、特記仕様書に記載された適用基準、単価適用年月、施工条件を確認することが重要です。
また、川崎市では、道路工事保安施設設置基準として、川崎市土木工事共通仕様書等で定める道路工事保安施設における標準様式図、設置標準図等を示しています。
引用元:川崎市「土木工事標準積算基準書等について」
交通量の多い幹線道路や市街地工事では、保安施設、交通誘導、安全対策、夜間施工などが積算差異の要因となりやすいため、共通仕様書や設置基準の確認が重要です。
川崎市では、土木工事資材等単価表、公共工事設計労務単価表、設計業務委託等技術者単価表を公表しています。川崎市が発注する工事の積算に用いる単価表として位置づけられており、令和8年5月1日にも新しいお知らせが掲載されています。
引用元:川崎市「土木工事資材等単価表・公共工事設計労務単価表」
川崎市のような大都市部では、資材単価や労務単価の確認だけでなく、搬入出条件、交通規制、夜間施工、狭隘地施工、臨海部での施工条件、処分先条件などによって、見積単価や施工費が変動しやすい点に注意が必要です。
川崎市の積算では、直接工事費、共通仮設費、現場管理費、一般管理費等の区分を正確に把握することが重要です。
最低制限価格の算定では、直接工事費100%、共通仮設費90%、現場管理費90%、一般管理費68%をもとに算出基礎割合を求めます。予定価格の80%から95%の範囲で設定され、10,000円未満の端数は切り捨てられます。
引用元:川崎市「川崎市工事請負契約に係る最低制限価格取扱要綱」
また、令和7年6月1日以降の公告案件では、低入札価格調査における価格失格基準が、調査基準価格の95%を基準とする方式に見直されています。ただし、当該金額が予定価格の80%を下回る場合は、予定価格の80%が価格失格基準となります。
引用元:川崎市「令和7年6月から入札契約制度の見直しを行います」
特に、以下のような項目は経費計算上の取り扱いを確認する必要があります。
設計書の備考欄や条件明示に、諸経費対象外、率対象外、積上げ計上などの記載がある場合は、経費算定結果に大きく影響するため注意が必要です。
川崎市では、市公表単価や標準積算基準に基づく単価だけでなく、現場条件に応じた見積単価が採用される案件があります。
特に、川崎市では以下のような条件により、見積単価や施工単価が変動しやすくなります。
同じ工種・同じ材料であっても、施工場所や作業条件によって金額が大きく異なる場合があります。過去案件の設計書や採用単価の傾向を確認し、条件差を反映した積算を行うことが重要です。
川崎市の工事では、設計図書、特記仕様書、見積参考資料に、積算上重要な条件が記載されている場合があります。
特に確認すべきポイントは以下です。
川崎市では、令和8年4月1日以降に公告または指名通知書を送付する全入札案件で、積算内訳書に労務費等の内訳記載が求められます。材料費、労務費、法定福利費の事業主負担分、安全衛生経費、建退共掛金などの区分を整理しておくことが重要です。
引用元:川崎市「入札時に提出する積算内訳書への労務費等の内訳の記載について」
川崎市では、最低制限価格の算定において、直接工事費100%、共通仮設費90%、現場管理費90%、一般管理費68%という費目別の考え方が用いられます。
引用元:川崎市「川崎市工事請負契約に係る最低制限価格取扱要綱」
他都市でよく見られる「直接工事費97%」ではなく、川崎市では直接工事費100%で算定する点が、予定価格や最低制限価格の予測における重要な違いです。
応札価格を検討する際には、次の点を意識する必要があります。
川崎市では、最低制限価格付近に応札が集中する案件も想定されます。価格戦略を立てるうえでは、積算精度だけでなく、最低制限価格・低入札価格調査・価格失格基準の制度理解が重要です。
川崎市の総合評価落札方式では、標準型、簡易型、特別簡易型の3種類があり、工事内容に応じて適用されます。評価項目には、企業の施工能力、配置予定技術者の能力、信頼性・社会性、地域性、施工計画、技術提案などが含まれます。
引用元:川崎市「川崎市総合評価落札方式のガイドライン」
総合評価案件では、低入札価格調査制度が適用され、最低制限価格制度は適用されません。また、価格失格基準が設定されている案件では、その基準を下回る入札は失格となります。
引用元:川崎市「川崎市総合評価落札方式のガイドライン」
価格を抑えるだけではなく、技術提案や施工計画の実行可能性、過去実績、配置技術者の評価、地域性評価などを踏まえた入札戦略が求められます。
各地域の特徴を日々収集し研鑽しつづける土木積算システム「アトラス」
上記の他にも、各自治体独自の土木積算の特徴やルール、クセ、運用上の習慣などが多数存在します。これらを土木会社の一人の担当者が常にキャッチアップしていくことは容易ではありません。
川崎市では、最低制限価格・低入札価格調査制度・総合評価落札方式・価格失格基準・積算内訳書・労務費等の内訳記載・土木工事資材等単価表・公共工事設計労務単価表・道路工事保安施設など、積算実務で確認すべき項目が多岐にわたります。
土木積算システム「アトラス」は全国21拠点のサポート体制を持ち、各地域の発注者の特徴や最新情報を日々収集・検証し、システムのアップデートやユーザーサポートを行っています。アトラスを活用することで、川崎市仕様の積算条件を効率的に反映し、現場実態に即した見積作成を高精度に行うことが可能になります。
川崎市の公共工事入札は、一般競争入札・指名競争入札を中心に、最低制限価格制度、低入札価格調査制度、総合評価落札方式、積算内訳書提出などを組み合わせて運用されています。
特に、川崎市では最低制限価格の算定において、直接工事費100%、共通仮設費90%、現場管理費90%、一般管理費68%という費目構成が重要となります。他自治体で多い直接工事費97%とは異なるため、川崎市仕様を前提に積算することが欠かせません。
また、令和7年6月1日以降の公告案件から、低入札価格調査における価格失格基準は、調査基準価格の95%を基本とする方式に見直されています。令和8年4月1日以降の公告・指名通知案件では、積算内訳書に労務費等の内訳記載も求められるため、価格精度と書類精度の両方が重要です。
さらに、川崎市は臨海部、工業地帯、多摩川沿い、住宅密集地、幹線道路沿道、再開発エリアなど多様な施工環境を持つため、交通規制、夜間施工、道路工事保安施設、搬入出条件、処分費、上下水道工事の条件などが積算差異の要因となりやすい地域です。
土木積算システム「アトラス」を活用すれば、川崎市仕様の積算条件を効率的に反映し、発注者ごとのルール差異や地域特性を踏まえた見積作成を実現できます。積算精度と業務効率を同時に高めるツールとして、ぜひご活用ください。
各地域の積算傾向を徹底分析し、川崎市仕様にも対応。
発注者ごとの積算条件を反映し、最適な見積づくりをサポートします。
30年の実績と土木積算のノウハウが蓄積された土木積算システム「アトラス」。
その大きな特徴は全国に配置した拠点による地域に密着したサポート体制とシステムのローカライズ(地域化)。
昨今、地域や担当者ごとの土木積算の特徴や習慣をおさえることが土木積算精度を上げるうえで大切になってきています。
アトラスでは各地の拠点にて地域の情報収集、検証作業を行い、知見を蓄積し、導入ユーザーに土木積算ノウハウを共有しています。
昨今の公共⼟⽊⼯事⼊札は、建設⼯事の中でも特に精度が求められています。
土木積算システム「アトラス」を展開するコンピュータシステム研究所の協力のもと、公共工事、土木工事の落札のコツ・ポイントについて解説!